社外取締役メッセージ

石橋 和男いしばし かずお

2024年3月26日の定時株主総会で監査等委員である社外取締役に再任され、同日の取締役会にて取締役会議長に就任しました石橋和男でございます。

社外取締役  石橋和男

社外取締役(監査等委員)
取締役会議長
指名委員会委員長
報酬委員会委員

①取締役会の実効性

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 監査等委員として社外取締役は会社の業務執行を監督・監査するのはもちろん、執行側の経営判断を支援することで、会社の成長・発展に貢献することが役割と心得ます。その機能には財務に限らず、法務や労務、ステークホルダーとのコミュニケーションなど多様な視点が求められます。なかでも近年、社会的な要請が高まっているのがサステナビリティに関するスキル・視点です。社会と企業がともに持続し発展していくことについて、企業としての考え方の表明とその実践が求められています。業務執行は当然のことながら、目の前の業績や喫緊の課題についての経営判断に力点が置かれることになりますが、そこに多様な視点、中長期的な問題意識を提供し健全な経営が維持されるよう後押しをすることが、社外取締役に期待されていることであると考えています。
 取締役会議長を社外取締役が務めることは、取締役会の監督機能においてそれらの多様な視点をより重視する企業姿勢の現れです。各々の取締役の自由闊達で建設的な議論を醸成する議事運営を通して、取締役会の実効性を一層強化してまいります。

 2022年8月に、鈴木会長兼CEOが取締役会議長を兼任する体制から、社外取締役が議長を務める体制に移行しました。そのことによる変化は、取締役会における議論がより深いものになったという点です。執行側にとっては自明でも社外取締役にとってはそうではない事柄というものは当たり前にあるものですが、社外取締役が議長を務めることでその議案、対処事項の前提となっている本質的な構造についての議論が俎上に上りやすくなりました。これにより取締役会が社外取締役も議論に参加し建設的な意見を述べやすい雰囲気となり、経営トップが求めておられた活発な議論を行う環境が整ったと思います。社外の多様な視点を踏まえた意思決定が求められる昨今、この変化は重要なものです。

 私が新任の社外取締役として就任した2020年の取締役会の構成は、社内取締役6名、社外取締役3名、という構成でしたが、2024年3月の株主総会終了時点での構成は、社内取締役5名、社外取締役4名となっており、そのうち女性取締役は、0名から2名に増加しています。執行と監督の分離、およびダイバーシティの観点で、当社のガバナンス体制は良い方向へ漸進しているという印象です。一方で、企業の成長や持続可能性に真に資する取締役会の構成、メンバーのスキルマトリックスは、その会社の置かれた状況や社会そのものの変化によって変わっていかねばなりません。今後も時代の要請に応え、変化に柔軟に対応できる取締役会の在り方を模索してまいります。

②指名委員会・報酬委員会について

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 今回の定時株主総会を以て、長年当社の社外取締役を務めてこられた2名の方がご退任され、新たに2名の方をお迎えすることになりました。指名委員会においては、当社の経営課題である”事業成長”に資するスキルをお持ちの方、特に事業投資に関する知見や、人的資本経営に関する知見、そしてそれらの前提となるコーポレート・ガバナンスに関する見識が豊富であり、実務的なご意見ご見解をお示し頂く能力を有する方、という基準で選考・面談を重ね、指名委員会で議論のうえ社外取締役候補者として取締役会に提案するに至りました。株主総会でご承認頂いたことで、指名委員会が現時点での最適解としてご提案した取締役会構成について、株主各位からもご同意を得られたものと思っております。

 昨年の指名委員会では取締役候補者の選定を進めると同時に、経営責任者の後継者選抜・育成を目的としたサクセッションプランの整備を行いました。今後は執行側が推進する具体的な育成計画のモニタリングを通して、この制度がより実効的なものになるよう後押しすることになります。この仕組みが正しく機能するよう、必要に応じて調整を行うことも指名委員会の役割と考えています。
 報酬委員会については、株主総会で決議された報酬額の範囲内で、各取締役に対する適切な評価に基づいて報酬額を検討し、取締役会に提案しています。当社の業務執行取締役の役員報酬は基本報酬、業績連動報酬及び譲渡制限付株式報酬によって構成されていますが、取締役の報酬の在り方については、一般論としてさまざまなオプションがございますので、当社にとってどのような構成が最適であるかという点について、硬直的にならずに継続的な議論をしていく必要があると認識しています。

③中期経営計画と長期ビジョン

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 当社は2020年2月に2020年から2023年までの4か年中期経営計画「EJ2023」を公表しましたが、2021年に「EJ2023」最終年度における営業利益計画を前倒しで達成したことから、2022年に新たな3か年中期経営計画「EJ2024」を策定・公表したという経緯があります。「EJ2024」で公表された目標値は、そこで示した長期ビジョンを含め、意欲的なものだと評価しています。実際の業績目標の達成という観点では最終年度の結果を待たなければなりませんが、そこで示された方針・施策、例えばガバナンス体制の強化にかかる取り組みについては、政策保有株式の縮減や譲渡制限付株式報酬制度の導入など、計画通りに進捗していると評価しています。また、株主還元についても「配当性向35%を目安に安定的かつ継続的な利益還元を実施」するという配当基本方針と、機動的に実施されている自己株式の取得により、妥当に実行されているものと考えています。

 長期ビジョンは、「2030年までに売上高600億円、営業利益80億円を目指す」というものです。達成のためには事業成長、ひいては投資が不可欠です。当然ながら投資にはリスクがつきものであり、当社の現在の財務状態は積極的にリスクを取りに行く余地のあるものだと言えますが、投資方針ないし個々の案件については、内在する諸リスクに鑑み、客観的な立場で冷静に意見を申し述べることが社外取締役の重要な役割であると心得ています。
 また、長期ビジョンの射程は2030年ですが、その先も当社が社会のなかで存在し続けるためには、パーパスとサステナビリティについての施策も議論されなくてはなりません。2024年度は中期経営計画「EJ2024」の最終年度にあたりますので、次の経営計画は、2030年に向けた中間地点を示すものになります。取締役会においては、これまで以上に中長期的に事業を支える人的資本及びその他の非財務資本についての具体的な施策にかかる議論がなされることを期待しています。

略歴

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1975年11月等松・青木監査法人(現有限責任監査法人トーマツ)入社
1980年8月公認会計士登録
1988年7月監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)社員(パートナー)
1989年8月米国トウシュ・ロス会計事務所(現米国デロイト・トウシュ会計事務所)ニューヨーク事務所出向 ニューヨーク地区業務執行パートナー
2007年11月監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)本部監事
2014年11月デロイトトーマツ合同会社 監査委員会委員長
2018年1月公認会計士石橋和男事務所 代表(現任)
2018年6月公益財団法人天田財団監事(現任)
2019年6月公益財団法人塩事業センター監事(現任)
2020年3月当社社外取締役(監査等委員)(現任)

坂本 敦子さかもと あつこ

社外取締役  坂本敦子

社外取締役(監査等委員)

指名委員会委員
報酬委員会委員

①取締役就任にあたって

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 私は航空会社に国際線客室乗務員として入社いたしまして、首相特別機(ワシントン訪米、ベネチアサミット)の乗務、会社をPRする仕事などさまざまな経験をさせていただきました。その後、外資系総合化学会社の人事部において採用・人財育成の仕事に携わり、1995年に人財育成コンサルタントとして独立し、令和7年に創業30年を迎えます。
 研修・カウンセリングの現場で接した社会人と学生の成功体験・失敗体験の要因分析をベースに、人生やビジネスのタイミングをつかむ実践行動学「タイミング マネジメント®」をオリジナル開発し、2005年に発表しました。今まで支援してきた受講者は延べ6万人を超えます。
 現在、ダイバーシティの推進やリーダーシップ、キャリア開発なども含め、経営幹部から新人、学生まで幅広い層を対象に人と組織の変革・課題解決を推進する研修、講演、執筆で幅広く活動しています。

 「豊かな人間環境の創造を目指して社会に貢献する」という経営理念のもとに、環境保全のエキスパートとして長年にわたりさまざまな実績を積み重ねてきた「実行力のある会社」であり、環境に対する社会的な取り組みが高まる中で、世の中の変化に機敏に応えるために常に挑戦し、進化し続けている会社であると感じています。
 先日、中央研究所、環境計測技術センターの視察に参りましたが、荏原実業の企業活動が社会の安心・安全・快適につながっていることを実感いたしました。
 取締役会はじめ社内会議では各議案について毎回丁寧な説明と議論がされています。
 忌憚のない質問や意見交換が積極的に行われていますので、透明性の高い経営、ガバナンス体制の強化に努めている企業という印象を受けています。
 持続可能な地球環境の改善、安心して暮らせる生活環境を実現していくためには、荏原実業の力と進化が求められ、期待されていると思います。

②サステナビリティについて

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 荏原実業は、昨年の8月に4つのマテリアリティ(重要課題)を発表しています。これらのマテリアリティは企業としての持続可能性とともに、社会やステークホルダーの持続可能性も意識したものになっています。私は4つのマテリアリティのなかでも「変化を成長に変える組織づくり」に関する課題に対して、重点的に施策を展開することが有効であると考えています。「人的資本経営」を基軸に、社員一人ひとりの持っている力が十分に発揮される環境づくり、ダイバーシティの推進、待遇の改善、積極的な教育投資・人財育成(成長機会)が必要です。
 当社は「長期ビジョン」を掲げていますが、その2030年にあるべき姿と、現在の状態とのギャップをまずは「見える化」すること。そして今後の事業を取り巻く環境の変化を先読みし、現場の声に耳を傾け、着手するべき「緊急で、重要なこと」「緊急ではないが、重要なこと」を判断することが大切です。「今、このタイミングで着手することの効果、しないことのリスク」を考慮し、現場を巻き込んで、社員一丸となって取り組むことが変化を成長に変える組織に進化するための重要なポイントです。

 人的資本の価値を最大化させるための取組としては、次のようなものが挙げられます。

  • 効果的な「目標管理」の運営
  • 属人化の解消に向けた取組
  • 新規採用に対する効果的なアプローチと採用後のフォロー
  • 経営の根幹となるコンプライアンス教育の実施

 具体的な施策に落とし込むにあたっては、いずれの施策においてもあるべき姿と現実とのギャップを把握し、そのギャップを埋めるためにはどのようなアプローチを取るべきかという分析・判断が必要となります。また、これらの取組が有効に機能するためには、経営者から現場の管理職を含むマネジメント層のリーダーシップが不可欠であり、それぞれが管掌・担当する組織の中で以下の条件を整えていくことが求められます。

  • 「心理的安全性」を高めること
  • 「対話」の機会の創出(1on1ミーティングの実施など)

 人的資本経営は、人財の価値を最大限に引き出すことで企業の中長期的な価値を向上させていく活動ですので、いずれの施策も“継続的に”実施することが重要です。

③社外取締役(監査等委員)の役割について

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 コンプライアンスを実践して健全な企業経営を遂行する支援をしていくこと、また執行側が社会から選ばれる企業経営をしているか、株主に代わって監査することが社外取締役(監査等委員)の役割であると思います。
 業績とは「お客様・社会からの有り難うの対価」であり、社会にいかに貢献したかを数値化したものと捉えています。持続可能な成長を実現するためには経営方針や目標達成、業績向上に向けた監督だけでなく、ステークホルダーや社会一般から信任を得られるよう、コーポレートガバナンスの改善・強化を継続的に行っていくことが重要です。
 経営は判断・決断の連続です。強い理念と明確なビジョンを持って、期限のない事柄に先手必勝でどう取り組むかが未来の結果につながります。ビジネスの現状と変化の先読みをし、「今、このタイミングでやらないことで発生するリスクの大きさ」を比較して、やるべきことの優先順位を考え、タイミングを逃さず着手しているか、リスクマネジメントをしているかを見ていくことも重要な役割だと考えています。経営の判断・意思決定が正しい方向でなされているか、また、実行できているかをしっかり見ながら、サポートしていきたいと思います。
 また、長年にわたり取り組んできた人財育成の経験を「人的資本経営」の強化に活かしてまいります。そのためにも率直な意見を言える関係を築き、対話を積み重ねていきたいと思います。

 ビジネスを取り巻く環境は大きく変化し、先行き不透明な状況が続いていますが、こういう時こそ荏原実業が培ってきた強みを発揮して社会に貢献するという使命があると思います。ガバナンスの強化、ダイバーシティの推進、エンゲージメント向上への提言を通じて、人的資本の最大化に取り組み、荏原実業グループの持続的発展に向けて企業価値の向上に積極的に取り組んでまいります。

略歴

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1983年4月日本航空株式会社入社
1991年4月 BASFジャパン株式会社入社
1995年2月プライム(現 株式会社プライムタイム)代表取締役(現任)
2004年4月経済産業省独立行政法人評価委員会委員
2015年4月独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)
業務実績評価に係る意見聴取会有識者メンバー
2018年4月独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)
経営に関する有識者メンバー(現任)
2022年6月サンワテクノス株式会社 社外取締役(現任)
2024年3月当社社外取締役(監査等委員)(現任)